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Real 第12話『箱の空気』
地下へ降りる階段は、いつもより少しだけ狭く感じた。Oracle にとっては見慣れた入口だった。雑居ビルの脇。少し古びた看板。派手ではない照明。ライブハウスの名前…
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Real 第13話『鳴る前に呼ばれた夜』
電話が鳴った時、Shadow はゲームセンターの奥にいた。いつものフロア。いつもの明るさ。いつもの過剰な電子音。反復するデモループ、判定音、ランキング表示、失敗…
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Real 第14話『まだ落ちていない一音』
地下の箱の空気は、いつもより静かだった。無音という意味ではない。スタッフの足音もある。カウンターの氷の音もある。アンプの小さなハムノイズも、誰かの低い話し声も、…
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Real 第15話『まだ名前がない』
Nomad が「一音でいい」と言ったあと、箱の中は少しだけ深く静かになった。誰も喋らない。喋ると薄くなると、全員どこかで分かっていた。Oracle は KORG…
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Real 第16話『線になってしまう音』
最初の一音が落ちたあと、誰もすぐには次を言葉にしなかった。言葉を挟むと、たぶん壊れる。その場にいる全員が、なんとなくそれを知っていた。地下の箱は狭い。狭いくせに…
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Real 第17話『偶然の形をしていた構造』
音が切れたあと、箱の中は妙に静かだった。完全な静寂ではない。アンプの微かな残り。ケーブルの擦れる音。客席の誰かが息を吐く気配。グラスを置く小さな音。地下特有の空…
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Real 第18話『まだ名前のない道』
地下を出ると、夜の空気は少しだけ冷たかった。箱の中の熱がまだ皮膚に残っているせいで、外の風が余計に現実へ引き戻してくる。さっきまで同じ空間に閉じ込められていた音…
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Real 第19話『言葉にする前の輪郭』
喫茶店の灯りは、地下の箱よりずっと柔らかかった。さっきまで音で埋まっていた耳が、今はカップの触れる小さな音や、店内の低い話し声をゆっくり拾っていく。向かいには …
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Real 第19.5話『帰り道の静かな翻訳』
喫茶店を出ると、夜気は来た時より少しだけやわらかくなっていた。 人通りはまだある。 終電には早い。 店の灯りも、駅へ向かう足音も、街の流れもまだ止まらない。 そ…
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Real 第20話『感覚の輪郭』
一方その頃、男三人は少し古い飲み屋へ入っていた。チェーンではない。でも気取りすぎてもいない。カウンターと小さなテーブルがいくつかあるだけの店。照明は低く、木のテ…